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- 酸性電解水について
原水(水道水など)に塩化ナトリウム(食塩)を微量添加した食塩水(NaCl濃度0.2%以下)を有隔膜式電解槽内で電気分解して、陽極側から得られる次亜塩素酸を主生成成分とする陽性の水溶液を「酸性電解水(pH2.2~6.5)」といいます。
この水溶液は優れた『殺菌力』を有しており、電解生成装置によって異なるpH範囲と有効塩素濃度の水溶液が生成されるため、強酸性(pH2.2~ 2.7),弱酸性(pH 2.7~5.0),微酸性 (pH 5.0~6.5)のものがあります。
- 酸性電解水の名称について
酸性電解水は国が指定した市場に合わせて名称が定められています。医療分野では強酸性の電解水が1995年に手指消毒用として、1996年には軟性内視鏡洗浄消毒装置として厚生労働省から認可され、名称を『強酸性電解水』として定めています。
食品分野では2002年に「人の健康を害する恐れが無い」という理由で食品添加物の殺菌料として厚生労働省から認可され、『次亜塩素酸水』という名称が付けられ、さらに農業分野では2014年に特定防除資材として農林水産省から認可され、『電解次亜塩素酸水』と定められました。
近年、新型コロナの衛生対策の一つとして『次亜塩素酸水』という言葉をよく耳にすると思いますが、上述のように“名称”が異なるだけで『酸性電解水』のことを意味しています。
市場 |
名称 |
認可登録 |
医療分野 |
強酸性電解水 |
医療機器(手指消毒、軟性内視鏡洗浄消毒器) |
食品分野 |
次亜塩素酸水 |
食品添加物の殺菌料 |
農業分野 |
電解次亜塩素酸水 |
特定防除資材 |
- 強酸性電解水と強アルカリ性電解水について
酸性電解水(次亜塩素酸水)の中で強酸性電解水は、pH2.2~2.7、酸化還元電位(ORP)+1.100mV以上、有効塩素濃度20~60ppmという物性を示し、優れた殺菌力を有します。その殺菌力は有効塩素濃度40ppmの強酸性電解水で、同じ塩素系消毒剤である次亜塩素酸ナトリウム0.1%(1,000ppm)を上回る殺菌活性を示します。
また、強アルカリ性電解水は、強酸性電解水と同時に陰極側から生成される副生成物です。pH値は10.0以上の強アルカリ性を示し、酸化還元電位(ORP)も-800mV以下に低下します。この水溶液は石鹸に含まれる水酸化ナトリウム(NaOH)を微量に含むことから、タンパク質を溶解や油脂を乳化させ汚れを落とす力(洗浄力)を有しています。
- 強酸性電解水の特長
優れた殺菌力
強酸性電解水の殺菌基盤は、電気分解により発生する次亜塩素酸(HOCl)です。物理化学分析(ESR)の結果、強酸性電解水中にはヒドロキシラジカル(・OH)や過酸化水素(H2O2)が生成している事が分かっています。興味深いことに、これらの化学種は生体内における好中球が生成するものと同じです(好中球は白血球の一種で生体内に浸入してきた細菌を貪食し殺菌することで感染を防ぐ役割があります)(図1)。
また、強酸性電解水で処理した細菌は、細胞表面や菌体内の核酸(DNAやRNA)やたんぱく質が損傷を受けることが電子顕微鏡観察、核酸分析たんぱく質分析によって明らかになっています。さらにメチオニン(アミノ酸の一種)のS(硫黄)が酸化されることも明らかになっています。これらの現象はヒドロキシラジカルの作用によるものです。
強酸性電解水は、薬剤耐性菌(MRSAや緑膿菌など)を含めた病原菌、腸管出血性大腸菌O-157やサルモネラ菌など幅広い食中毒菌に対して即効的殺菌活性を示します。また、消毒剤をはじめとする化学処理に抵抗性を示すとされる芽胞形成菌に対しても殺菌効果を示します(図2)。
<参考 強酸性電解水の効果>
高い安全性
強酸性電解水は有機物に触れると普通の水に戻るという特性を持っています。従って他の消毒剤と違って毒性も弱く、人体や環境に対する害はほとんどありません。
強酸性電解水は以下の安全性試験において良好な成績を得ており、常用消毒薬に比べて安全性が高いと判断されます。
医療用具承認装置による強酸性電解水の規格基準(医療編)2003年版
低コスト
強酸性電解水を生成するのに必要なものは水、電気、食塩のみ。ランニングコストは1リットル当たりわずか0.6 円です。強酸性電解水を使用することで、従来かかっていた消毒経費を大幅に削減することができます。
- 強アルカリ性電解水の洗浄効果